中年女性ではコレステロールが高くなる

2013年03月04日

中年女性ではどうしてもコレステロールは高くなりやすい

コレステロール上限値がいまだ昔の220mg/dlのままで、過度な投薬が行われているという声も高い

大櫛陽一著の「間違いだらけの診断基準」(太田出版、2006)という本には、各検査値の男女差の違いおよび年齢差による変化が詳細に記載されています。

男女差がある検査値は多くあります。例えば赤血球数、ヘモグロビン、血糖値、コレステロール値、HDL値、尿酸値などです。また、年齢により変化する検査値もあります。
加齢と共に減少するのは、アルブミン、赤血球数、血小板などです。一方、年齢と共に上昇するのは、LDL、コレステロール、中性脂肪、血糖値、血圧などです。

現在の人間ドックの検査項目で、男女別があるのは、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット値くらいです。まして、年齢差はまったく考慮されていません。

女性の体は更年期までは省エネになっている

女性の体は、一般に男性より小さく、筋肉量も少なく、出産・育児に備えて省エネと節制構造になっていますので、エネルギーに関連する検査値が男性より低くなっています。女性は、出産や更年期までは、省エネモードですが、更年期後は、男性の値に近くなります。

老年期で、女性の方が高くなる検査項目は、コレステロール、LDLなどです。女性の赤血球数は、更年期には少し増加します。人間ドック受診の女性で異常と出る検査項目数は、男性のそれの約1/5です。女性は、省エネと節制モードで、故障が少なく長生きできるようになっています。

 
人間ドックでは、コレステロール値に一喜一憂する人が多いです。コレステロール値が高いと動脈硬化が促進され、心筋梗塞や脳卒中の危険性が増すことが広く知られているからです。日本動脈硬化学会は1997年に、コレステロールの上限値を、男女差や年齢差に関係なく、220mg/dlに定めました。

しかし、2002年の改正では 240mg/dlに改正しましたが、ほとんどの病院はコレステロール検査値の上限を現在でも220mg/dlにしています。欧米では240mg/dlに なっていますし、人間ドック学会でも240mg/dlを採用し、治療開始を260mg/dlとしています。コレステロール値は加齢により大きく増加します。20代女性の平均値は180mg/dlですが、中年女性では220mg/dlに増加します。
 
中年女性コレステロールグラフ.jpg

現在のコレステロール上限値220mg/dlは20-30代女性に適応できる値であり、中年女性には低すぎる。
この分布をもとに設定すると、中年女性の半分が異常になってしまう!


一般に、多くの人の検査値を統計処理すると図のように正規分布になります。正常値は、中央部分の95%の範囲に設定されており、異常値は、上限と下限の合計面積5%に相当する所の値に設定されています。

図のように、中年女性のコレステロールの平均値は220mg/dlで、ここに正常値の上限値を定める と、中年女性の半分が異常となります。現在設定されている上限値の220mg/mlは、20-30代女性に適応できる値です。人間ドックでも、コレステロール値が220mg/dl以上の人は、全健診者の約30%(男性26%、女性37%)にもなります。しかも、治療を受けている人は、全健診者の約5%(男性4.3%、女性6%)です。やはり、治療を受けている女性の割合が少し多いようです。

コレステロールの正常値が、220mg/dlに設定された理由は、世界に先駆けて我が国で開発された三共株式会社(現在は第一三共株式会社)の抗コレステロール薬のメバロチンという薬物の影響が大きいと思います。これまで多くの中年女性が、高コレステロール血症と診断され、この薬を飲んできました。メバロチンは、2002年末に特許期限が切れ、ジェネリック薬が発売されるようになりました。 救いは、メバロチンのコレステロール低下作用が、最近の新しい抗コレステロール薬(第2世代)に比べて弱いことです。それだけに副作用も少なかったようです。

最近は、やっと多くの医師が、中年女性のコレステロール値の設定がおかしいことに気づいて、抗コレステロール薬の処方を控えるようになりました。一度決めた検査値はなかなか改正できないのが通例です。図で分かるように、健康な中年女性では、上限の2.5%に相当するコレステロール値は、280mg/dl です。平均値は220mg/dlで、治療目標値(50%値)は240mg/dlになります。

また、女性のコレステロール値は、20代から50代にかけて40mg/dl近く上昇しますが、心筋梗塞や脳卒中はほとんど増加しませんので、女性には抗コレステロール薬の投与が不要であるとのメガトライアルがいくつか報告されています。最近、やっと日本でメバロチンのメガトライアルのデータが一部発表されましたが、メバロチンはもともとコレステロール下降作用が弱いので、個々のコレステロール低下値と冠血管疾患の予防効果の因果関係がはっきりと論文に明示されていません。とにかくコレステロールを少し下げれば冠血管疾患の予防効果がありますよと言った程度のものです。
※メガトライアルとは、大規模介入試験。これは数千人から数万人の規模で、ある検査や治療薬が特定の病気の診断や治療に有効かどうかを、長期間にわたり調査し、科学的に立証するものです。
 
高コレステロール血症とは逆に、180mg/dl以下の低コレステロール血症では、癌、うつ病、自殺・事故、感染症などによる死亡率が増加しますので注意が必要です。コレステロールは細胞膜の主要な成分ですので、コレステロールが低いと、細胞が傷つき易くなるのでしょう。残念ながら、コレステロールを上げる薬はありません。
また、第二世代の抗コレステロール薬は、作用がかなり強いので、コレステロールを200mg/dl以下に下げないようにしましょう。




posted by shinto at 11:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生活習慣病の予防
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