乳がん治療「ハルステッド手術」〜乳房全摘手術

2011年05月12日

あなたはがん治療を受ける?

今や、がんに罹る人口は国民の半数という。がんに罹れば当然、“治療”ということになるが、それをどの程度信頼したらいいのだろうか?

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患者の医療に対する「盲信」と、医師を「絶対的な依存とする考え方」に問題はないのか。医師も人間、医療もその人間の行為である。ミス(医療過誤)もあれば限界もある。その実態について『あなたが病院で「殺される」しくみ(古川利明著・第三書館)』を参考に考えてみたい(本図書の一部を抜粋し編集しました)。
「1998年8月新潟県立がんセンター病院で左右を取り違えて乳房を切除された女性の場合、「そもそも乳房を切除する手術を行う必要があったのか」という疑問が浮かび上がってくる。この女性の左胸に見つかったしこりは2〜2.5センチだったが、実際に行われた手術は、乳房はもとより、その裏側にある胸筋や脇の下のリンパ節をも切除してしまう「ハルステッド手術」と呼ばれるものだった。

このハルステッド手術は米国のジョン・ホプキンス大学外科教授、ウィリアム・ハルステッドが十九世紀末に考案した。乳房はもとより、その下の胸筋(大胸筋、小胸筋)やリンパ節まで根こそぎ切り取るために、術後は胸のあばら骨が浮き出て、腕の動きも悪くなって苛酷な結果をもたらす。

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しかし、このハルステッド手術は、その後も乳ガン治療の「王座」として君臨しつづけた。
というのは、当時、ハルステッドは「世界最高の外科医」とも評されていた。そういった“権威”が編み出した手術法に、医師はもちろん、患者も必要以上にありがたみを感じていた。また、もう一つはハルステッド手術以前には、これほど広範囲の臓器を摘出した手術がなかったため、どれだけ延命するかという科学的根拠が確かめられないままに、これが一般化してしまったのである。

ところが1970年代に入り、欧米でハルステッド手術の科学的な検証がなされた。
すると、「ハルステッド手術は意味がなく、体にも有害である」ということが立証された。このため、胸の筋肉を残して乳房だけを切除する「胸筋保存乳切術」や、より小さな範囲での切除ですまして、なるべく乳房を残したまま放射線を照射する「乳房温存療法」へと移行するようになる。

結果、1980年代のアメリカではこのハルステッド手術は姿を消すことになる。
さらに、1990年6月に米国立衛生研究所が「T期、U期の乳がん患者の大多数については、乳房を残す温存療法の方が乳房全摘除より望ましい」という勧告を出したことなどによって、現在の欧米では乳房温存療法が主流になっている(※T期はしこりの大きさが2センチまで、U期は2センチ以上〜5センチ)。


当前のことかもしれないが、女性にとって乳房を失うということは、他の臓器とはまったく違った意味での非常にデリケートな問題を含んでいる。実際、アメリカで行われたハルステッド手術を受けた既婚女性に対する追跡調査によって次のことが判明している。

■全体の4分の1が、傷心のあまり、自殺を考えるほど深刻な抑うつ状態に陥っている。
■全体の4分の1が、夫との性生活の破綻に悩まされている。
■全体の半数以上が「幻影乳房症候群」と呼ばれる、失った乳房をまだ持っているかのような幻想に悩まされる。


それでも日本ではハルステッド手術が続けられた。乳がんの患者団体「イデアフォー」が行ったアンケート調査では、1997年になっても東京女子医大病院第二外科では新規患者168人中18人(11%)、杏林大病院第二外科では新規患者105人のうち15人(14%)にハルステッド手術がなされた実態を明らかにしている。

なぜ、日本の外科医がハルステッド手術に固執するのか? その理由を『私の乳房を取らないで』(生井久美子著・三省堂)の中で、済生会横浜市南部病院外科の岡田卓子医師の話として、次のように紹介している。

「外科医にはメスヘの誇り、こだわりがあります。いまの病院長クラスが手術をしていた時代は定型的乳房切断術(ハルステッド手術)といって、できるだけ大きくえぐり取る手術が正統派と言われてきました。
できるだけ多く取るというのには『場を荒らさない』という発想があったんです−“場を荒らさない”というのは、がん細胞の取り残しがないように、また、がん細胞を散らさないように周りの正常細胞も含めてそっくり取ってしまうということらしい−これがハルステッド手術の根拠として私たち外科医が受けた教育でした。だから、百年続けてきたハルステッド手術から乳房だけ取る手術(胸筋保存乳切術や乳房温存療法)に移行する時に、外科医の問ではずいぶんギクシャクしたと聞いています」

こうした背景には、日本の外科医たちのメスに対するこだわり、というよりも、がんを完治させるにはできるだけ大きく臓器を切り取って転移させないということにある。そこから生まれてくるのは、人間の臓器を切り取ってしまうことを何とも思わない外科医の「不感症」につながる。すなわち、相手の痛みを思いやる想像力というものが根本的に欠如してしまうのである。


温存療法の判定↓

日本の「乳房温存療法ガイドライン」には、「3cm以下」ということになっています。ただし、3p以上でも患者が温存療法を希望する場合は、十分な術前・術後治療ができるかどうか検討するという注意がついています。

現在では、乳がん手術が行われる全国平均の約半数が乳房温存療法ではないかといわれています。
病期(ステージ)T期、U期の乳がんに対する標準治療が、現在ではこの乳房温存療法です。がんの大きさが5cm以下であれば基本的に温存療法が可能です。
これは、5p以下であれば全員乳房を残せるという意味ではありません。

乳房を残せるかどうかは、乳房の大きさとがんの大きさのバランスによって決まります。つまり、手術でがんの取り残しがなく、しかも美容的にも満足できる状態で乳房が残せると予測できれば、乳房温存療法の対象となるわけです。
『乳がん初期症状と治療方法』のサイトより


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posted by shinto at 17:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | がん